お寺の掲示板『嫌な人はいない、嫌だと思っている自分がいるだけだ』
人間関係を作っていく中で、どうしても「好きな人」「嫌な人」というのがでてきます。
好きな人とはいつまでも一緒にいたいし、できるだけ長く付き合っていきたいと思います。
反対に、嫌な人からは一瞬でも離れて、できるだけ会うことを避けるように行動してしまいます。
ところが、自分にとって「好きな人」「嫌な人」が、別の人にとっては「嫌な人」「好きな人」であることがよくあります。
これは何も人には限らないでしょう。
例えば食べ物の好き嫌いも同じです。
自分の好き嫌いが、他者の好き嫌いと必ず同じということはありえません。
お釈迦様は
「 ものごとは心にもとづき、心を主とし、心によってつくり出される」
と言葉を残されています。
「好き」「嫌い」という感覚は、自分の心の中で起こっているに過ぎないのです。
そして、心の中で起こっている現象ならば、心が変われば好き嫌いも変わっていきます。
子どもの頃は嫌いで食べることができなかったピーマンを、大人になって食べられるようになったり、大好きで毎日のように食べられると思っていたカレーライスを、今ではそこまで食べたいとは思わなくなるというのは、そういうことではないでしょうか。
ピーマンの味が変わったのではなく、嫌いだったピーマンが食べられるように、自分の心が変わったのです。
人間関係も同じであります。
以前、嫌いでできるだけ会いたくないと思う人がいました。
口うるさく、頑固で、なかなか自分の意見を曲げない人です。
しかし、仕事の付き合い上その人と会わないわけにはいきません。
ときにはチームになって一緒に行事に取り組むこともありました。
何度も一緒に仕事をするうちに、その人の優しい気持ちや、仕事に取り組む熱意など、それまで知らなかった一面を知ることもできました。
するとだんだん、その人のことを嫌いとは思わなくなってきました。
以前と今と比べて、彼の言動が変わったかといえば、大きく変わっていないように思います。
相変わらず口うるさくて頑固です。
でも嫌いではありません。
付き合いを重ねていくうちに、「嫌い」という感覚がなくなっていったのです。
いったい「嫌な人」はどこにいったのでしょう。
「嫌な人」は、自分の心で作り出していたにすぎないのです。
「嫌だ」と思っている自分がいることに気がつけば、「嫌な人」はいなくなることでしょう。