和を以て尊しとなす
聖徳太子が作った十七条憲法の冒頭に「和を以て尊しとなす」とあります。和を大切にして反発しあわないようにしなさい、上下関係なく仲睦まじく話し合いができれば、ものごとは道理にかなって何ごとも成しとげられないことはない、というのです。七世紀に制定されたものですが、現代にも必要で大切な精神だと思います。
「和」という言葉は、戦争中の軍が結ぶ和平のことをいうそうです。そこから、争いのない平和、お互いに整った調和を意味する言葉として、現在でもつかわれているのです。
仏教でも同じ意味で使われていますが、特に「和合」という言葉で使われることがよくあります。お経の中に「同じく和合の海に入る」とあります。海ではいろいろな魚や生き物がお互いに共存しあって生きています。そのように、仏教を信仰し悟りの道を目指す人は、お互いに争うことなく、心をひとつにして行動していきましょうと教えているのです。この和合の精神を簡単にいえば、仲良くしましょうということですと、教わりました。
とはいえ、仲良くすることほど難しいものはありません。私もよく言い争いをして、他人とケンカをよくしてしまいます。ケンカといえば子どもの方が多いイメージがありますが、大人になってからの方が誰かと争うことが増えたような気がします。しかも、一度仲たがいしてしまうと、仲直りすることはもっと難しいものです。
学生時代に仲良くしていた友達と、けんか別れをしてしまったことがあります。振り返ってみれば、きっかけはほんの些細なことです。でも今さら謝ろうにも連絡を取ることができず、もっとこうしておけばよかったと後悔だけが残っています。
テレビやSNSを見ていても、人の上げ足を取るようにして、言葉の一言だけを取り上げて、あれがいいとか悪いとか言って攻撃をしています。それが大きくなって取り返しのつかない争いまで発展しては、あとからどうすることもできません。
聖徳太子は争いのない世界を願って「和」を大切にするようにいわれました。まず身近なところから、仲良くしていくことが大切なのかもしれません。

