不断念仏とは
不断念仏とは読んで字のごとく「断えず念仏する」ことです。
不断念仏のはじまり
不断念仏は、天台宗の慈覚大師円仁(794~864年)が日本に伝えたとされています。
90日という期間を決めて、阿弥陀仏の周りを念仏しながら歩くという修行です。僧侶が順番に交代しながら、ひたすら阿弥陀仏の名前を称え、心には阿弥陀仏を思い、断つことなく昼夜歩き続けます。
天台宗の修行の中に「四種三昧」といわれるものがあり、円仁がおこなったのはこのうちの常行三昧とされています。
四種三昧
・常坐三昧
・常行三昧
・半行半坐三昧
・非行非坐三昧
常坐三昧
90日間にわたってずっと坐り続け、坐禅に没頭する修行。
2度の食事と用便以外はもっぱら坐り続けます。
常行三昧
90日間にわたってずっとお念仏を続ける修行。
口では阿弥陀仏の名を称え、心では阿弥陀仏を思いながら、本尊である阿弥陀仏の周りを歩き続けます。
疲れた時には堂内の柱間にとりつけられている木(てすり)を頼りに歩いたり、天井からつり下げられた紐につかまって体を休めることはできます。しかし、決して坐ったり横になって休むことはできません。
半行半坐三昧
坐って行う行と歩いて行う行を組み合わせて行う修行。
方等三昧と法華三昧があり、比叡山延暦寺では法華三昧を行い、五体投地や法華経の読誦などがおこなわれます。
非行非坐三昧
上記3つ以外の修行。
日常生活がそのまま修行となり、行いのすべてが仏道につながることを理想とします。決してたやすいものではありません。
法然上人の不断念仏
天台宗の円仁がおこなった常行三昧が、日本で初めての不断念仏だとされています。
そして、天台宗でたくさん行われている修行の中から、念仏のみを選び取ったのが法然上人です。
お念仏によって、すべての人が平等に救われると気づいた法然上人は浄土宗を開き、民衆の人々にお念仏を広めていきました。
浄土宗では、延暦寺で行われていた常行三昧の不断念仏とは違う形で行われました。
所々に別時念仏を修し、不断の称名を勤むること、源、上人の在世より起これり
四十八巻伝
法然上人は、日常的にお念仏をすることをすすめました。しかし、なかなか平生にお念仏をすることは難しいものです。
そこで日常を離れて特別に日時を決めてお念仏をお称えすることがおこなわれました。だから不断念仏は「特別に日時を決めて念仏する」ことから「別時念仏」ともいいます。
日時を決めて多くの僧侶や民衆の人たちと一緒にお念仏することで、浄土宗の教えを各地へと広めていきました。