努力を妨げる五つの障害【五蓋】

目的達成の努力をする時に、それを妨げる五つの心の障害があります。 写真:ぱくたそ

仕事や勉強だけでなく、プライベートにおいても、何かを成し遂げたいという目標を持つことはとても大切なことです。そして、その目標に向かって邁進していくことに生き甲斐を感じ、喜びを感じ、またそれをやり遂げた時の達成感や幸福感は素晴らしいものがあるでしょう。

しかし、なかなかそれらが思い通りに思いどおりにいかないことがよくあるでしょう。そこには、自分の心に潜む五つの障害があるのです。

努力を妨げる五つの障害

お釈迦様は、私たちがこの世の苦しみから抜け出し、悟りを得て真の幸福を得るための方法を説かれました。

それは世の中のものごとを正しく見て理解し、修行することによって自分の心を変えて行くことです。自分の煩悩を打ち消して、悟りの境地へと至ることです。

しかし心には、この修行を妨げる五つの障害があります。

これを「五蓋(ごがい)」といいます。

こころの五つの覆いを断ち切って、すべて付随して起こる悪しき悩み(随煩悩)を除き去り、なにものかにたよることなく、愛念の過ちを断ち切って、犀の角のようにただ独り歩め。

『スッタニパータ』第一章

五蓋(ごがい)

五蓋
・貪(とんよく)
・瞋恚(しんに)
・惛沈睡眠(こんじんずいめん)
・掉挙悪作(じょうこおさ)
・疑(ぎ)

「蓋」とは、煩悩のことです。悟りへ向かう心を、上から蓋をするように覆いかぶさって、修行を妨げてしまうことを表しています。煩悩はすべて修行の妨げとなりますが、この五つが特にその障害となるので、五蓋とよばれます。

貪欲(とんよく)

貪欲は、貪りの心です。あれも欲しい、これも欲しいと次から次へと手に入れたいと願い執着する心です。

何かを求めることは生きていくために必要なことです。例えば、生きるためにはお金は必要なものです。しかし、一円でも多く稼ぎたいと執着することで苦しみとなるのです。食べるものも着るものも、もっといいもを、もっとたくさんと、それに執着することが、貪りの心となるのです。

瞋恚(しんに)

瞋恚は、怒りの心です。気に入らないことに対して怒ることです。

「気に入らない」とは、「自分の思った通りじゃない」ということです。気に入らないことは日常の中にたくさんあります。夕飯のメニューが気に入らない、夫の返事が気に入らない、妻のしぐさが気に入らない、子どもの口ごたえが気に入らない、上司の態度が気にいらない・・・こんな時に、怒りの心がわいてきます。

逆に、自分の思い通りになっているときは、怒りの心はわいてきません。夕飯が思った通りのメニューだった、夫から期待通りの返事が返ってきた、妻がしてほしいしぐさをしてくれる、子どもが親の指示通りに行動してくれる、上司が気を使ってくれる・・・こんな風に思い通りになっているときは、怒りを感じることはないのではないでしょうか。

しかし、ものごとは自分の思い通りにならないことばかりです。気に入らない出来事ばかりです。気に入らないことがあると、ついつい怒りをあらわにしてしまうのが人間なのです。

惛沈睡眠(こんじんずいめん)

これは「惛沈」と「睡眠」に分けられます。二つありますが、二つで一つの蓋となります。

惛沈は気持ちの沈み、沈鬱のこと。

睡眠は眠気のことです。

何をするにしても、やる気は必要なものです。しかし、気持ちが入りきらなければ目的は達成できません。また、眠気も目的を達成するための妨げになります。あくびが出て背中が曲がり、集中できないようでは、いつまでたっても修行の完成には至らないのです。

掉挙悪作(じょうこおさ)

これも「掉挙」と「悪作」の二つに分けられますが、二つで一つの蓋となります。

掉挙は心の浮つきのことで、気持ちがたかぶって落ち着きのない状態です。

悪作は後悔のことです。

意欲的になることはとても大切なことです。しかしそれがかえって悪い影響を与えてしまうこともあります。また、過去のことを反省することは大切ですが、いつまでも後悔しては修行の完成に至ることができないのです。

疑(ぎ)

は疑うことです。

悟りに至るためにはお釈迦様が説いた通りに修行していかなければいけません。それの教えに対して疑う心を持っては、当然悟りに至ることはできません。

自分の心をよく知ること

修行の妨げとなるとして「五蓋」が説かれました。これは現代社会においても同じことがいえます。仕事や勉強、プライベートなどで、何か目的を達成するためにも、この五つの障害には気をつけなければいけません。

収益を上げるために一生懸命に努力することは大切ですが、貪りの心を起こしてもっともっとと欲を出せば、かえって失敗して破綻することもあります。

自分の都合ばかり考えていては、思い通りにいかなくなった時に怒ってしまって人間関係を崩してしまうことになります。

意欲的に取り組まず、眠気に任せてすることをせずに取り組むことをしなければ、目的の達成はできません。

意欲的に取り組むことは大事ですが、感情的になって気持ちがたかぶり、落ち着きがなければ、仕事にミスがあらわれます。

自分の目的に対して、また自分自身に対して、自分のやっていることに対して、これでいいのかと疑っていれば、なかなか結果を出すことができません。

これらの心に潜む五つの障害が、目的達成のための努力を妨げているのです。

「五蓋」は「煩悩」です。煩悩は捨てなければいけません。日常でこれらの五つの心が生じることはよくあることでしょう。

貪りや怒り、眠気、浮つき、疑いが生じた時は、これらを取り去らなければいけません。そのために、まずは自分の心を知ることが大切です。自分が貪っているときには貪っていると知る、怒った時には怒っていると知る、眠たいときには眠たいと知る・・・と、自分が今どんな気持ちでどんなことを考えているか、自分の心をよく知ることから始めましょう。