悪口は自分を傷つける
インターネットを見ていると、いたる所で悪口や誹謗中傷が飛び交っています。
少し前にも、これが原因で自ら命を落とされた方もおられました。
すべての人が、他人を思いやる優しい言葉で交流することができれば、どれだけすばらしい世界になるでしょうか。
一日でもはやく、そのような日が来ることを願ってやみません。
他人に対して悪口や誹謗中傷の言葉を投げかける原因には、劣等感があるといわれています。
人間はついつい、他人と自分とを比較してしまう生き物です。
特に日本人の場合、集団で和を乱さないために、他人の顔色をうかがったり、他人の行動や言葉を気にして、自分と比べるなどの傾向が強いとされています。
このようにして他人と自分とを比べたとき、自分の方が優れていると感じたときには「優越感」をいだき、反対に自分が劣っていると感じたときには「劣等感」をいだきます。
劣等感は、その人にとって苦しみのもとです。
だから人は劣等感をいだいたとき、それを取り除きたいという衝動にかられます。
それを、悪口や誹謗中傷という形で表したくなるのです。
悪口や誹謗中傷は、相手を引きずり下ろして自分を強制的に優位に立たせるものです。相手に対して自分を優位に立たせることで、いだいていた劣等感をとりのぞくのです。
よく、「グチを言ってストレスを発散させている」として、悪口同然の会話をしている人を見かけます。
しかし、悪口や誹謗中傷をすることは、そのときは気持ちがよくてストレス発散をしているように見えて、実はその逆であることがわかっています。
東フィンランド大学の研究でによると、世間や他人に対して皮肉や批判の度合いが高い人は、認知症のリスクが3倍、死亡率が1.4倍も高いという結果になったといいます。
つまり、他人に対して批判的な傾向が高いほど、死亡率が高まるという傾向にあったというのです。
また、悪口を言うとストレスホルモンが分泌され、悪口を言いながらも実は自分でストレスを感じているということがわかっています。
他人に対して、悪口や誹謗中傷の言葉を投げかけることが、かえって自分自身を苦しめているということが、科学的にも証明されているのです。
お釈迦様は、このような言葉を残しておられます。
人は生まれたときには
実に口の中には斧が生じている
愚者は悪口を言って
その斧によって自分を切り裂くのである
『スッタニパータ』
木を切り、モノを生み出すために使われる斧ですが、使い方によってはこれで人を傷つけることもできます。
そのように、人間の発する言葉には人を傷つける危険があります。
しかしお釈迦様は、自分の口の中に持つ斧は自分を傷つけるというのです。
悪口や誹謗中傷によって他人を傷つけているようで、実はそれは自分自身を傷つける行為になっているのです。
日常においても、インターネットの中においても、言葉遣いには十分に気をつけなければいけません。