「くしゃみ」の由来と習慣

「くしゃみ」の由来と習慣

先日、友達と話をしているとき、鼻がむずむずしてきて、思わずくしゃみをしてしまいました。

すると友人は、すかさず「よいしょー!」と合いの手を入れてきたのです。

何を急に言うのかと思ったのもつかの間、二発、三発と、続けてくしゃみをしてしまいました。

友人はそれに対しても「よいしょー!」「よいしょー!」と合いの手を入れるのです。

ようやく落ち着いた私は、今の「よいしょー」は何かと聞きました。

すると友人は「特に意味はない」と言うのです。

話を聞いてみると、昔から友人の家ではそのようにしてきたそうで、誰かがくしゃみをすると、近くにいる人が「よいしょー!」と合いの手を入れるのだそうです。

そのときは、へーそうなんだという程度にしか思っていませんでした。

しかし、少し気になったので何か意味があるのかと後から調べてみると、くしゃみに関する面白い話が出てきました。

くしゃみは思いがけないところで突然起こります。

このような突然の激しい現象に対して、昔の人は霊魂を結びつけて見ていたそうです。

くしゃみをすることで体内の霊魂が飛び出すとか、悪霊が取り憑いているから突然激しい現象がおこるのだとか考えられていたのです。

そこで、くしゃみをしたときには、言葉をなげかけることによって、その人の健康や幸せを願ったというのであります。

これは日本に限らず、世界でも行われている習慣だそうです。

たとえば、アメリカではくしゃみをしたときに、その人に対して「Bless You(神のご加護を)」と言うそうです。

また、ドイツ語では「Gesundheit(健康を)」、イタリア語では「Salute(健康を)」、イスラム教徒は「アッラーを賛美せよ」などなど、さまざまあるそうです。

日本でも、中世の時代には「くさめ」と唱えていたと伝えられており、『徒然草』にもそのエピソードが出てくるそうです。

ある人が清水寺にお参りに行く途中、年老いた女性が「くさめ、くさめ」と唱えながら歩いていました。

そこで「なぜそのようなことを言っているのか?」と尋ねましたが、それでもまだ唱え続けていました。

何度も何度も尋ねていると、女性が腹を立てて言いました。

「くしゃみをしたときにはこのように言わなければ死ぬと言われているから、やっているのだ」

面白い話であります。

日本ではくしゃみをしたときに「くさめ」とと唱えなければ死ぬといわれていたというのです。

お釈迦様が生まれたインドでも、くしゃみは命に関わる不吉なものとして考えられていました。

そこで、くしゃみをした人には「どうぞ長生きを」と言って健康を願う言葉をかけるそうです。

そしていわれた人は、「皆様も長生きを」と返事をするのが慣わしなのだそうです。

あるときお釈迦様が弟子に説法をしているときに、くしゃみをしてしまいました。

それを見た弟子たちは、口々に「どうぞ長生きを」「どうぞ長生きを」と言うのであります。

それを聞いたお釈迦様は「そんな迷信を信じてどうするのだ。これからはくしゃみをしても何も言ってはいけない」と命じました。

それ以来、弟子たちは誰かがくしゃみをしても、知らぬ顔で無視するようになりました。

ところがある時、その弟子の一人が在家信者さんたちの前で教えを説いている時、くしゃみをしたのです。

なにも知らない信者さんたちは口々に「どうぞ長生きを」と唱えましたが、弟子の方は釈迦の教えを守って、何も言いませんでした。

つまり礼儀としての返事をしなかったのであります。

在家の人びとは「釈迦の弟子は礼儀知らずだ。あんな連中とはもう付き合わない」と腹を立てて怒ってしまいました。

これを聞いたお釈迦さまは、「これからは、くしゃみをした時には、ちゃんと返礼せよ」と命じたというのです。

お釈迦様は、迷信やまじないのようなものを信じることを禁じました。

そういうものに惑わされることなく、現実のあるべき姿を見つめて修行することを教えていました。

しかし、在家信者の人の支えが無ければ、仏教教団は生活していくことができません。

お釈迦さまは、過度に禁止を求めるのではなく、在家信者との関係を保っていくための手段として、それまでの習慣に従うことを勧めたのであります。

「中道」という教えがありますが、まさにその通りであるように思います。

これが正しい、あれが間違っている、などどいってその意見に固執しているうちは、いつまでたっても悩み苦しみから解放されることができません。

周りの人々との関係を保っていくためには、自分が信じているとか信じていないとかに関わらず、その習慣に従っていくことも必要なのでありましょう。

このときの、「どうぞ長生きを」という祈りの言葉は、インドの言葉で「クサンメ」と言うそうです。

これが日本でも使われるようになり、くしゃみをしたときには「くさめ」と言い、祈りの言葉がそのまま「くしゃみ」という現象を表す言葉となったといわれています。

くしゃみは、今では単なる生理現象として捉えられていますが、こんな些細な現象に対しても「どうぞ長生きを」と祈ることができれば、そこに幸せな心が生まれてくるような気がいたします。

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